太古から私たちの生命をはぐくんできた海は,われわれ人類の幸福のため,その資源と空間を十分に活用しながら,子孫のため保存しなければなりません。近年の人間活動,とくに生産活動の急激な増加にともない,環境破壊に留意することなく,大量の廃棄物を注入したり,沿岸を変形させるなど,海洋に大きな人為的作用を加えたため,環境に著しい変化が生じてきました。
私たちはこの現状が地球の生態系を変え,ひいては人類の生存を危うくすることを憂えるとともに,学会としてこれまで環境問題に対する取り組み方が,消極的であったことを反省するものです。今後一層の熱意をもって海洋の基礎研究を進め,広く関係学問分野と国内的また国際的に協力し,海洋環境の変化を監視して,将来の予測を確実にすること,また研究成果をすみやかに実際面に役立てることが大切と考えます。
日本海洋学会は,ここに海洋環境問題委員会を発是させ,今後積極的な環境問題の具体的な研究方法および研究体制を討議確立し,その活動を通じて,海洋環境の改善に努力するとともに,いかなる形においてもわれわれの研究が、環境改善とは逆の方向に悪用されることのないように努めます。 ここに日本海洋学会昭和48年度総会の決議により,私たちの見解と決意を表明し,広く社会の理解と協力を得て,目的の達成を望むものであります。
昭和48年4月8日
日本海洋学会