2001 年,日本政府は都市再生プロジェクト(第二次決定) において,東京国際空港(以下,羽田空港)の再拡張事業を選定し,2002 年6 月,「羽田空港を再拡張し,2000 年代後半までに国際定期便の就航を図る」ことを閣議決定しました。4 本目の新滑走路の位置を確定した国土交通省は,2009年の完成を目指し、2006 年春には着工の予定です。
本事業の環境影響評価に関しては,2004 年11 月28 日に一か月間の環境影響評価方法書(以下,方法書) の縦覧期間が終了し,国土交通省は2006 年の事業着工にむけ,影響評価準備書(以下,準備書)の作成段階に入っています。
この事業計画は,羽田空港沖から多摩川河口域にかけて,埋立と桟橋のハイブリッド構造の滑走路を建設するものであり、東京湾の水域生態系に少なからぬ影響を与えることが考えられます。したがって,その環境への影響は時間をかけて慎重に論議され調査されなければなりません。しかし、方法書から準備書作成までの期間は,環境影響評価を行うにはあまりにも短いように思われます。
方法書に対する意見の提出期限(2004 年12 月13 日) はすでに過ぎましたが,長年にわたり海洋の環境を調査・研究してきている日本海洋学会海洋環境問題委員会としては,本事業の環境影響を最小限に止めることを切望し,羽田空港再拡張事業における環境影響評価のあり方について特に見解を表明します。
本見解は、日本海洋学会の学会誌である「海の研究」第14巻第5号(2005年9月発行)に掲載されます。そのため、見解の内容は日本海洋学会幹事会で審議、承認を受けたものであります。上述しましたとおり、本件は極めて急を要する問題となっています。そのため、学会誌の発行を待たずこのような形で見解を公表することを併せて付記いたします。
なお本委員会はこの見解を国土交通省 関東地方整備局 港湾空港部空港整備課及び環境省 環境影響審査課環境影響審査室に提出するとともに、7月28日、環境省記者クラブにおいて会見を実施いたしました。