洋上風力発電の導入に向けた環境影響と合意形成に向けた課題と現状に関する情報交換
開催日時:2022年9月3日(土)13:00~17:00
方式:名古屋大学東山キャンパスとオンラインの同時進行によるハイブリッド開催
現地会場:環境総合館 1F レクチャーホール(第1会場)
主催:日本海洋学会 海洋環境問題研究会
共催:名古屋大学 大学院環境学研究科・宇宙地球環境研究所
コンビーナー:福田 秀樹(東大大海研)・小松 輝久(日本水産資源保護協会)
趣旨
2020年10月の政府による「2050 年カーボンニュートラル宣言」および昨今の国際情勢に伴うエネルギー安全保障への対応策として再生可能エネルギーに対する期待が高まっている。2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画は、エネルギーのうち再生可能エネルギーの割合を2030 年度には36~38%にし、なかでも洋上風力発電は、大量導入やコスト低減が可能であり、経済波及効果も大きく、再生可能エネルギー主力電源化の切り札として推進していくことが必要であると指摘している。しかしながら、洋上風力発電施設が沿岸環境や漁業に及ぼす影響についての懸念があることから、海域利用の合意形成が大きな課題となっている。洋上風力発電は海底に固定された基礎の上に発電機が設置される着床式と海上に係留された浮体構造物の上に発電機が設置される浮体式に大きく分類される。その他に、送電のための海底ケーブルだけでなく、海上に変電施設を伴うものもある。建設から運転時のこれらの施設が及ぼす流れや光環境など、物理環境(水の濁り、水中音、流向・流速)や海洋生物(コウモリ類、鳥類、海棲哺乳類、魚類、浮遊生物、底生生物)への影響を把握するために、洋上風力発電施設が生物を含めた海洋環境へ及ぼす影響を検討するための調査が行われている。また、洋上風力発電の適地に多数の洋上風力発電施設が設置される集合型風力発電所(ウィンドファーム)がつくられる場合、累積的影響を考慮する必要性も指摘されており、再生可能エネルギー導入を推進すべきエリア、環境保全を優先すべきエリア等の「ゾーニング」を活用した実証事業も行われている。しかしながら風力発電の導入が陸よりも遅れている海洋では、洋上風力発電に影響を及ぼされる可能性のある海洋生物やそれらの生息環境に関する基礎的な情報が陸域に比べて少なく、影響評価に関する国内の研究事例も十分ではない。そこで本シンポジウムでは大規模な洋上風力発電施設の導入で先行する海外での研究事例も含め、想定される影響や合意形成の研究事例の最新の動向を紹介し、市民・研究者・行政の担当者(ポリシーメーカー)の間で情報交換を行い、海洋科学の視点から合意形成に向けた課題点を明らかにする。
プログラム
13:00-13:15 開催主旨説明 福田 秀樹(東京大学)
13:15-13:40 洋上風力発電が海鳥に与える影響と影響軽減策 浦 達也((公財)日本野鳥の会)
13:40-14:05 水中音の影響 赤松 友成(笹川平和財団)
14:05-14:30 藻場への影響について 小松 輝久(日本水産資源保護協会)
14:30-14:55 構造物周辺の生態系への影響:魚類の研究事例を中心に 中田 英昭(長崎大学)
14:55-15:05 休憩
15:05-15:30 風車近傍の風の流れ 鈴木 章弘(株式会社 風力エネルギー研究所)
15:30-15:55 合意形成のガイドラインと事例紹介 諏訪 達郎(内閣府)
15:55-16:20 実海域フィールドセンターでの合意形成までのプロセス 中野 俊也(NPO法人 長崎海洋産業クラスター形成推進協議会 長崎海洋アカデミー)
16:20-17:00 総合討論