公開シンポジウム「東京湾の過去・現在・未来」
シンポジウムの内容は「海洋と生物(生物研究社)」の241号、242号にて特集されています。
開催日時:2018 年 9 月 29 日(土)10:00 ~ 16:45
会場: 東京海洋大学 品川キャンパス 講義棟大講義室
主催: 日本海洋学会 海洋環境問題研究会
共催: 東京湾海洋環境研究会、日本海洋学会 沿岸海洋研究会、東邦大学 東京湾生態系研究センター
協賛: 東京大学海洋アライアンス、東京湾再生官民連携フォーラム、東京湾をよくするために行動する会
後援: 東京湾再生官民連携フォーラム
コンビーナー:
片野俊也(東京海洋大)・梅澤有(東京農工大)・野村英明(東京大)・風呂田利夫(東邦大)
趣旨
東京湾は、かつて世界で最も富栄養化の進行した内湾と言われた。その後、総量規制が行われるようになり、栄養塩濃度は次第に低下してきているとされる。しかし、その一方で、環境中に残るヒステリシスの存在によって赤潮と貧酸素水塊は現在も頻発している。赤潮は、有害、悪いイメージを持たれがちだが、基礎生産者でもある。貧酸素水塊は、底生生物群集に場合によっては回復不可能なダメージを与える。内湾の基礎生産者の動態は、栄養塩の供給状況だけでなく、埋め立てや空港滑走路の建設と言った湾そのものの形状や気象などの非生物的環境要因と捕食者となる動物プランクトンや底生生物、魚といった生物的環境要因とも相互に関連している。貧栄養化が先行している瀬戸内海では、総量規制により、赤潮の削減に一定の効果が認められているが、生物生産(漁獲)は低迷したままである。東京湾において、栄養塩の流入を規制すれば、過去の”古き良き東京湾”が蘇ると言うよりも、底生生物相を中心に大きなダメージを受け、地形も大きく変わった現状では、過去とも現在とも異なる第三の東京湾生態系が形成されることが多い大いに考えられる。
総量規制と言った行政による施策の東京湾再生、回復へ果たす役割は非常に大きい。しかし、施策は一度走り出すとなかなか修正ができず、規制が行き過ぎだと気づいても修正することは難しく、時間がかかる。そのためにも、施策の効果をいち早く検出、評価し、次の施策へ早く動きだすことも大切である。
東京湾には、長い調査研究の歴史もある。本シンポジウムでは、長く東京湾を見てこられた、プランクトン、底生生物、魚類の研究者にそのモニタリング成果を紹介頂くことで、東京湾奥部の現状について知見を共有し、進行中とされる貧栄養化が海域の生物相や生物生産にどのような影響を与えるのか、また、貧栄養化が東京湾生態系に与える影響をどのように評価していくべきかについて考えたい。
プログラム
10:00-10:10 主旨趣旨説明 野村英明(東京大学)
10:10-10:40 河口・沿岸・外海が繋がる東京湾の流動環境 ―羽田周辺水域を中心として― 八木宏(防衛大学)
10:40-11:10 東京湾における水質の長期変動と水産生物への影響 石井光廣(千葉県水産総合研究センター)
11:10-11:40 東京湾における栄養塩類・溶存有機物濃度の長期変動 久保 篤史(静岡大学)
11:40-13:00 休憩
13:00-13:30 東京湾における海洋酸性化の現状と将来予測 川合美千代(東京海洋大学)
13:30-14:00 東京湾の植物プランクトン 石丸隆(東京海洋大学)
14:00-14:30 東京湾の環境変化と動物プランクトンの変遷 立花愛子(東京海洋大学)
14:30-14:45 休憩
14:45-15:15 東京湾に出現したミズクラゲ個体数の長期変動 石井晴人(東京海洋大学)
15:15-15:45 干潟ベントス種多様性低下の現状 風呂田利夫(東邦大学)
15:45-16:15 東京湾における底棲魚介類群集および個体群の長期変動 児玉圭太・堀口敏宏(国立環境研究所)
16:15-16:45 総合討論